Monologue

日々感じたことをコツコツと。

夜明け前のご褒美

夜明け前の空を見上げたことはあるだろうか。私は週に一度仕事の都合で朝4時に起きて、5時には家を出る日がある。朝はゆっくり寝ていたい…早起きでかわいそう…と思う人も居るだろうが、実はわたしは一週間でこの日が一番好きなのである。

まず、この日は朝起きると大好きな建築の番組がやっている。わたしはこの番組が大好き。昔から素敵なお家を見つけるのが好きで、中はどうなっているのだろうか、覗かせてほしいな。とお家をじっくり観察する子供だった。この番組は、実際に生活している家族の家へ訪問し、デザインが素敵なお宅を隅々拝見させていただく。まさしく私が幼き頃がやりたい!と思っていたことを実現している番組である。特にクローゼットや収納、家主がこだわったポイントなどマイナーだけどカスタマイズされている場所が見える回はテンションがあがる。いつかはこんな素敵なお家に住みたいなあと妄想を膨らませながら、ホット甘酒豆乳をすする時間は至福の時である。

次に大好きな料理の番組が始まる。これも、気取った料理番組ではなく、あくまで普段の生活の中で実践できそうな家庭的な料理が多い。普段作り慣れている料理でも、あー!こんな一手間で味が変わるのか!と、トイレを我慢するほどに真剣に見ている。さらにこの時間に見た料理は大概別の時間に再現している。とにかく真剣に見ているのである。私が料理番組が好きな理由は単に食べることが好き、作ることが好きということもあるが、料理をしている過程を見るのが好きというのが一番だと思う。少しの手間暇を目にした後に食べる料理は美味しさも一入で、見た目や味以上の感情を私に抱かせる。この真剣に料理番組を見る時間もまた至福の時なのである。

この番組が終わるとそろそろ外出の時間である。朝方は冷えるので完全防備で外へ繰り出す。しばらく歩くと、いつも目の前に現れるのは煌々と輝く月。夜明け前の静まり返った住宅街に在る月は、いつもひっそりと輝くその姿からは想像できないくらい夜空の主役になっている。建物や道路に目があるのなら、そこにあるすべての目線を奪っているといっても過言ではないが、それでいてどこか控えめでかぐや姫を思わせる月なのである。いつもなら気にも留めない存在なのに、あなたって実はそんなにも美しかったのね。と驚かされれる。特にこの時期は少しづつ日が長くなって、夜明けの時間が早まっているので、そらが藍色に近い色になっていて、漆黒とはまたちがう上品さを感じるのである。誰もいない道路でこの美しき月を独り占めする時間は、心底贅沢で、寒さなど忘れてしまう。毎日4時起きでもいいと思うほどだ。

こんな些細な、人には理解されないであろう、わたしだけの贅沢が夜明け前の時間には詰まっている。ちょっと真面目な話をすれば、最近大人になってこういう自分だけの楽しみを見つけることが上手になったと思う。こういう言葉にし辛いワクワクが自分の感情をコントロールし、ご機嫌を生み出す。自分がご機嫌だと人にもご機嫌を分けてあげられる。自分のご機嫌を作るのは他人じゃなくて自分。いろんな本にそんなようなことが書いてあったけど、やっと自分なりの方法を見つけて、実体験から感じられるようになった気がする。少し気分が晴れない日は、あえて4時に起きて美しいものをただ美しいと感じる。そんな時間を持つことは私にとってこれからもご褒美タイムになるだろう。細切れの時間でも自分だけのご褒美タイム、もっと見つけていきたいな。